私たちが運動するときには量や強度を設定します。
ウエイトトレーニングであれば重量、回数、セット数、ラントレーニングであれば距離や時間、インターバルなどを決めると思います。
量や強度を設定するのは、そのトレーニングの中で身体機能に十分にストレスを掛けて適応させるためです。
時々、選手にセット数や時間を伝えた上で、トレーニングの際中や終了直後に追加したり、セット数や時間を決めずに出来るだけ速くなどを指示して行う場合があります。これは、選手が持っているパフォーマンスを最大限に発揮させるための戦略ですが、ここに、その方法が適切ではないかもしれないというデータがあるので紹介します。
これまでは、運動は体の疲労によって制限されるという考えでした。その考えの下で、上記のようなトレーニングが実施されていました。
しかし、自分のペースで行う運動の制御は、過去の運動の経験、現在行なっている運動の予想される距離や時間に基づき、運動の最初から行われているというのです。
少し難しいですが、簡単に言うと、自分では意図していなくても、身体が自然と過去の経験などを基にこれから行う運動の調整をしているということです。
ここにラストスパート現象というものがあります。例えば、自分のペースで自転車でのタイムトライアルを行う中で、一定間隔で1㎞と4㎞の全力スプリントを4回ずつ組み込んだ結果、全力スプリントの発揮パワーは回を重ねるごとに低下したが、タイムトライアルの最後の5㎞の方が最初の5㎞よりも発揮パワーが上がっていた。最初の0~5㎞より最後の95~100㎞の方が強くペダルと漕いでいたということなのです。
ラストスパート現象とは、運動終了近くに運動強度が大きく上昇することで、これはそれまでに実施者がどれほど追い込んでいたかは関係ないということを表しています。
運動の終了時点の状態が不確実なので、無意識に筋肉の動員数やエネルギー代謝の「リザーブ(予備)」が維持されることで、身体に大きな負荷が掛かる際に対応することが可能になり、ホメオスタシス(恒常性)に大きな破綻をおこすことなく運動を遂行することができ、運動終了が近づくにつれて不確実さが減り、「リザーブ」が必要でなくなり、より大きなスピードやパワーを発揮することを許可するという制御システムなのです。
続きは次回に…
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